2014年11月13日木曜日

下町の風情が残る町「月島」

現地調査するにあたって

明治中期、東京湾埋め立て第1号地として誕生した町、月島では、子供達が出汁で溶いた生地で鉄板に文字を書いて覚えながら食べていた文字(もんじ)焼きと呼ばれるものが流行しました。それが現在のもんじゃ焼きのルーツと言われています。

そして今から約11年前、もんじゃ焼き店28店の店主が集まって地域の活性化と発展を目指し、「月島もんじゃ振興会協同組合」が発足しました。全長約500メートルのもんじゃストリートは、今では約70のもんじゃ焼き店が組合に加入し、月島といえばもんじゃ焼きというイメージをつけることに成功しました。

今回私たちは2014年7月5日に、東京の「月島」舞台として「食」をテーマに「月島もんじゃストリート」を現地調査してきました。お話をして下さった大江戸坂井店主の坂井さんの話によると、年間4~5万人の観光客がここ月島を訪れ、また中学校の修学旅行の企画の一部として利用されることも多く、主に東北や名古屋からの修学旅行生がもんじゃ焼きを食べに来ると嬉しそうに話していました。


そこでもんじゃストリートの外観を観察し、3つの分野(家族向け、社会人向け、学生向け)に分けて、私たちが選んだそれぞれの分野におすすめのお店を紹介したいと思います。


社会人におすすめ-【大江戸坂井】

月島駅の7番出口(通称:もんじゃストリート口)を出てすぐ、「もんじゃ案内所」の左隣にあるのが平成14年創業の「大江戸坂井」です。おしゃれでバーのような店内は落ち着いていてシックな雰囲気があります。

お客さんは社会人の方が主で、夜の接待や商談などで訪れる方も多いそうです。店主の坂井さん(66歳)によれば、接待などで初めて訪れた方がお店を気に入り、また別の商談で訪れることや、口コミによってお客さんが来るのだそうです。

(2014年7月5日月島の大江戸坂井店舗内で中井春花撮影)

東京オリンピックの開催により外国人のお客さんが増えることが予想されますが、大江戸坂井では英語のメニューを作り対応しています。外国の方が来店されることについては「うれしい」、「歓迎する」とのことでしたが、「日本に来るんだからペラペラとまではいかなくても、ちょっとは日本語勉強してきてほしいね」と、坂井さんは笑いながらおっしゃっていました。

大江戸坂井のおすすめメニューは一番人気の「ミックスもんじゃ」(1530円)。プリプリのエビをはじめ、豚、ホタテ、イカ、タコと具材がたっぷりの自慢のメニューです。落ち着いた店内で大人もんじゃを楽しみたい方は、ぜひ大江戸坂井を訪れてみてください。


家族におすすめ-【月島】
もんじゃ焼きストリート3番街に位置するこのお店を、家族向けに選びました。明るく落ち着いた雰囲気の店内は、家族で家で食事をしているようなゆったりとした時間が過ごせると感じたからです。
 店員の石橋さんのお話によれば、姉妹3人でお店を切り盛りしているそうです。このお店は石橋さんのご両親の代から営業していて、元はお煎餅屋さんだったのを、もんじゃ・お好み焼き屋へ変えたそうです。

このようにもんじゃ焼きの店が軒を連ねる通りで共存していくのはどうですか?という質問をすると「昔は店舗はもっと少なかったが、今は活気があって良いと思う」と笑顔で話して下さいました。「競争というより、お互いに切磋琢磨している感じがある」と語る表情はいきいきとして見えました。
 東京オリンピックが近づくと、外国人観光客が増えると予想されるが、そのことについてはお店としても対策をしているそうです。「海外からのお客さんはもともと多いです。焼き方が分からない方にはこちらが焼きます。英語のメニューも置いていますよ」と石橋さん。では、困ることはあまりないということですか、と尋ねたところ、「英語は勉強しようと思っています。簡単な会話くらいは…」と、お茶目に笑いながら話して下さいました。

201475日、東京都央区月島の店舗にて  松本真季撮影

インタビュー最後で、「この町にどうあってほしいですか?」という質問をした。石橋さんは「この町の雰囲気を大事にしてほしいですね」とおっしゃっていました。「下町の情緒もあるけれど、上を向けば高いビルもあって、なかなかない景色だと思うんです。だからそれを守って行きたいです」。幼いころよりこの町で育ち、店を守っている石橋さんならではの思いではないのか、と感じました。


学生におすすめ-【まんまる】

真っ赤なのれんが目印の「まんまる」。店内は照明が明るく、壁にはたくさんの芸能人の方のサイン色紙が飾られていました。私たちがお店に行ったとき、すでに外で順番待ちをしている人がいましたが、お店の回転が早く、私たちも待ち時間5分程度で、入店することができました。このお店は学生さんや、たくさん食べる若い方におすすめです。私たちは実際にここで昼食をとったのですが、他にも数人グループで食べに来ている学生さんたちがいました。

201475日、東京都央区月島赤いのれんが目印 のまんまるの店舗前にて、中井春花撮影     
まんまるでは、1時間1100円で食べ放題を楽しむことができます。食べ放題の対象メニューには、お好み焼きやもんじゃ焼きだけでなく、焼きそばもあります。人気メニューの「もち明太子チーズもんじゃ」と、デザートもんじゃがおすすめです。デザートもんじゃは、中に餡やクリームなどの甘い具材を入れて、焼いたものです。デザートもんじゃは、生地を薄く焼かなくてはいけないので普通のもんじゃよりも作るのが難しいのですが、お店の方が作って下さいました。お店の方のサービスがとても温かかったです。


取材・執筆した感想

今回、「食」をテーマとして月島のもんじゃ焼きについて、調査してきました。ただ、おすすめのもんじゃ焼きのお店についてだけでなく、月島の町にもんじゃ焼きが伝わった歴史や、町のことも調べました。町全体を調べることによって、月島の良さを理解することができました。                       



取材・執筆:中井春花・野口光紀・深水布由実・松本真季・山崎晴香

What Do You Feel on Japan? : Interviews with foreign visitors in Tsukiji

東京の観光名所である築地には、平日でも多くの人が訪れています。その中には外国人も多いです。築地問い合わせ所の方によると、経済発展によって東南アジアの人々が、また日本食のブームによって観光で訪れる方が増えているようです。日本に在住するフランスやスペイン人の中には日頃から利用している人もいるようで、他国からの日本食への関心が高まっていることがはっきり感じられます。

築地場外市場にて2014年4月4日と7月2日の2日間、外国人を対象にインタビューを行いました。インタビュー内容は以下の通りです。

築地総合案内所「ぷらっと築地」にてインタビューに応じる優しい雰囲気の香港人親子 2014.7.3 上平撮影
・日本食で好きなものは何か
・日本で困っていることは何か
・日本に来てよいと感じたことは何か
・日本の好きな場所はどこか

国名 人数(組数) 性別
アメリカ 4(2) 男2、女2
台湾 3(1) 男2女1
香港 3(1) 男1女2
タイ 2(1) 男1女1
フランス 4(2) 男2
ニュージーランド 1(1) 男1
中国 2(1) 女2
スペイン 2(1) 男1女1
イギリス 2(1) 男1女1
23(11) 男9女10

好きな日本食に関するインタビューでは、日本に訪れるのが初めてである人が多かったこともあってか、寿司、丼、ラーメン、うどんなどポピュラーなものを挙げる人が多かったです。朝早くからのマグロのせりに人気であるようで、私たちは9時からインタビューを始めましたが、すでに多くの外国人がいました。

一方で、かつおぶしや包丁など調味料や調理具を事前に調べて、買いに訪れる人もいるようです。そのため、外国人用築地案内には食料品だけでなく、様々なお店の紹介がされていました。

また、困っていることとして、「日本人と英語で会話ができない」「道案内の英語表示の少なさ」など言語の問題が多く聞かれました。実際に、私たち自身も‘What was the thing you had the most trouble in Japan?’とお尋ねした時、私たちの英語の発音能力が乏しいためか、‘trouble’がなかなか聞き取って頂けないことがありました。築地を訪れたのは良いものの地元の商店の人とコミュニケーションをとれないために、何をしたらいいかわからない方もいる、と案内所の方に伺いました。案内所では、そういった方に対して紹介する定番のお店を決めているそうです。築地を歩いていて、外国人が多い場所、少ない場所を見ていて感じられるのはそのような理由があるのかもしれません。

日本で最も好きな場所については、インタビューを引き受けて下さった外国人が日本に来るのが初めてである方が多かったためか、7組中6組の方が「東京」と答えていました。
日本に対するイメージでは、「礼儀正しさ」「親切さ」「安全」「街がきれいである」という答えがよく聞かれました。アメリカから訪れた男女2人組は、インタビューした時点で日本に来てまだ2日しか経っていなかったようですが、日本人の良いところとして「親切さ」を挙げていたのが印象的でした。

築地は、人にものを売る商売をする場所であるため、客に対して不安や不満を持たせず、つい買ってしまうような親しみやすさを感じさせる商店の心地よさがあったように思いました。


取材:上平祥世、菅原あゆみ、跡部真莉、小田島遥菜、清野由香梨
執筆:上平祥世

麻布十番:塩の専門店「塩屋(まーすやー)」

突然ですが、「塩屋」は何と読むでしょうか?実は沖縄の方言で「塩」のことを「まーす」、「屋」を「やー」と読みます。私たちは3日後、この塩屋という、沖縄の塩約140種類をはじめ、世界各国の塩約650アイテム以上を取り扱っている国内最大級の塩専門店に訪れました。ここでは、塩を使ったスイーツや、容器、ボディケア用品も販売していました。

 塩の専門家であるソルトソムリエの方に、この店の歴史について伺いました。塩屋は最初、沖縄だけに店舗がおかれていましたが、東京ソラマチに進出し、2013年12月21日に麻布十番に移転したそうです。塩屋では日本初の「ソルトソムリエ」制度を導入しているため、料理や食材に合う塩などを提案し塩選びをサポートしてくれます。

また、塩は暑い夏の季節にも大活躍ですよね!私たちの体内に含まれる塩は、熱中症を防ぐうえでとても重要です。塩が足りなくなると脳からの命令が体に伝わりにくくなり、体が怠い、頭が重い、食欲がないなどの症状に陥ってしまうので、水分だけでなく、塩分も同時に補うことで、体内のミネラルバランスを整えられるそうです。

ティスティングカウンターにて塩選びのコツを教えてくださるソルトソムリエ  2014.7.3清野撮影
外国人に人気な商品について伺ったところ、「アジアの方々には割と沖縄や日本の塩を好み、ヨーロッパの方々には岩塩や入浴剤をよくかっていかれる」と丁寧に教えてくださいました。また「当店で一番人気は何か」という質問には「やはり雪塩と黒塩のですかね。作り方と場所と量によって同じ塩でも味がかわってくるんですよ」と微笑みながら答えてくださいました。丁寧な接客から外国の方々にも日本の良さを感じていただけるでしょう。


取材:小田島遥菜、清野由香里
執筆:小田島遥菜

築地市場:築地の包丁「有次」

2014年7月3日昼前、築地場外市場にて、築地総合案内所「ぷらっと築地」のスタッフの方にお話を伺いました。私たちの学習の趣旨を伝えると「あら、清泉の学生さんなのね!」と温かく迎えてくださいました。案内所の方は、「Let's Shop at Tsukiji Wholesale Food Market!」と書かれた外国人用地図を使い、説明してくださいました!

築地を観光する外国の方は、コアな日本食マニアが多いそうです。寿司や丼もの以外の日本食が外国人に大うけしているという話は大きな発見です。最近の日本食ブームも相まって、調理器具や調味料を買いにくる方が増えているそうでした。調理器具の中でも一番人気の包丁店「有次」を紹介してくださいました。

取材者に包丁を持たせてくれた店主の小村さん2014.7.3跡部撮影
最後に、「頑張ってね!」と激励の言葉をいただきました。築地の人々の温かい人柄に触れられることは、外国の方にとっても、この土地の魅力の一つとして映るでしょう!
ひっきりなしに外国の方が包丁を購入する様子からは「有次」また包丁の人気を反映していました。

このようにお忙しい中、築地三代目の店主の小村さんがお話してくださいました。
はじめに、お店の歴史について伺いました。「有次」は京都日本橋と移転をし、現在築地で営まれている四百年続く老舗の包丁店だそうです。店内からは、老舗ならではの風格が感じられました。    

また、「外国の方にアピールしたいことは?」という私たちの質問には、日本人よりたくさん勉強して買いにくる方が多いので、特別に小村さんから伝えることはないとおっしゃ
いました。「お姉さんたちより勉強してきてるかもね(笑)」と冗談交じりにお話くださり、老舗にも関わらず親しみやすい雰囲気を肌で感じることができました。


研ぎ場では、どんな包丁も切れ味抜群にする店主の技術が光る 2014.7.3跡部撮影

日本の包丁は用途によって使い分けられていて、一番人気は三得包丁だそうです。三得包丁とは、文字通り三つの用途を持つ万能包丁のことです。このスタイルは、日本独自の文化で、外国の方に定評があるようです。海外で日本料理屋を経営する外国の方が築地まで買いつけにくることもあるそうで、日本食の人気と、「有次」の伝統を感じさせられました。

最後に、店内にある包丁の研場を見せていただきました。包丁の質は、研ぎ次第!と終始おっしゃていただけあり、研場は大切に扱われていました。一度見ただけでも、その神秘さに吸い込まれるほどです。「どうぞ、ご自由に写真とってくださいね」と快くおっしゃってくださり、お店の方のお心遣いには頭が上がりませんでした。ぜひ外国人旅行客にも立ち寄っていただきたいです!


取材:跡部真莉、上平祥世、菅原あゆみ
執筆:跡部真莉